転生したドルオタの復讐劇【推しの子／赤坂アカ＆横槍メンゴ】感想
田舎の産婦人科医の青年が前世の記憶を持ったまま、推していたアイドルの子供に転生―⁉ 赤坂アカさんと横槍メンゴさんの漫画「【推しの子】」のあらすじと感想をご紹介します。
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あらすじ
「この芸能界（せかい）において嘘は武器だ」 地方都市で、産婦人科医として働くゴロー。芸能界とは無縁の日々。一方、彼の“推し”のアイドル・星野アイは、スターダムを上り始めていた。そんな二人が“最悪”の出会いを果たし、運命が動き出す―⁉
テレビで美人芸能人が妊娠を発表すると「今死ねば○○○さんの子どもに生まれ変われるのでは」という言葉をネットで見かけたことがあります。まさに主人公のゴローは自分が推していたアイドル・星野アイの子ども・アクアとして転生、そしてこの物語が始まります。
突然始まった不思議な第二の人生だが、最愛の推しであるアイと自分と同じく前世の記憶を持つ同担の妹ルビーとの生活はアクアにとって充実したものとなっていく。そんな中で起きたひとつの事件が、アクアを復讐の鬼へと変貌させることに―⁉
感想
アイドルは意外と儲からない？
芸能人と聞くと華やかでキラキラした印象ですが、この作品はそんな芸能界の世知辛さもリアルに描いており、舞台の裏側を知るようなスリルが魅力的です。
例えばアイドルの月給。人気のあるアイドルならとても儲けているイメージがありますが、実際は印税も出演料もメンバーで山分け、LIVEは物販が売れなければ赤字ですし、衣装代は給料から天引きされるため月100万も稼げるアイドルはほんの一握りなのです。それを知るとテレビに映るアイドルの子たちを見る心持ちが変わってくるかもしれません。
メディアミックスの裏側がリアル
大きくなったアクアは復讐を遂げるために芸能界へ足を踏み入れ、仕事のひとつである漫画作品の舞台化に出演することになるのですが、脚本側と原作側の意見の食い違いで大問題に発展する、というシーンがあります。
私も過去に仕事でメディアミックスに携わっていましたので、思い入れのある作品を改変される原作側の腹立たしさも尺や別媒体に最適化して面白くしたい制作側の気持ちも痛いくらいわかりました。
漫画の原作者は漫画のプロです。お話だって一番よく理解した上で最高のものを作れるでしょう。しかし、漫画家は漫画のプロであっても舞台のプロではありませんよね。舞台には舞台でしかできない見せ方があります。「Aという作品を良いものにする」という考え方ではなく「Aという作品を○○という媒体に合った形で良いものにする」という認識をお互いに持って話し合えれば、より良いものになるんだろうなと気づかせられました。
合わせて読みたいマンガ
『累』―松浦だるま
女優の亡き母が遺した口紅を塗りキスすることで「相手と自分の顔を入れ替える」力を得た少女が、母譲りの演技力と奪った美しい容姿で女優として活躍していくお話。華やかな芸能の世界と、母親の闇を明らかにしていくサスペンス要素が『推しの子』と通ずる部分があります。
『かげきしょうじょ！！』―斉木久美子
宝塚を彷彿とさせる歌劇団の育成学校が舞台。主人公のひとりは元・国民的アイドルで過去に受けた性的虐待がトラウマで男性恐怖症となりファンにキモいと発言してしまう。『推しの子』に登場する有馬かな、黒川あかねなどみんな葛藤を抱えながらも奮闘しているところに共通するものを感じます…！
『ASKアスク』―原作：新堂冬樹／漫画：東西
トップアイドル・優奈は事務所期待の新人と社長に陥れられて超高級デリヘル嬢となり二人に復讐を誓う。少し系統は違いますが、芸能界の権力者への復讐がテーマなのが見どころです。
まとめ
今回ご紹介したのは赤坂アカさんと横槍メンゴさんの漫画「【推しの子】」でした。「週刊ヤングジャンプ」にて2020年4月に連載がスタートし、現在5巻までコミックス発売中です。
受賞歴
原作は「かぐや様は告らせたい」の赤坂アカさんなのでキャラクターの心情を組み立てるのが上手く、作画の横槍メンゴさんは「クズの本懐」の作者さんで人間のドロドロとした感情を描くのが上手く、最強のタッグで作られているのがこの作品の魅力を作り出しています。
本当であれば、転生することも伏せたまま紹介したいくらい「推しの子」の「子」になる、ということも衝撃的で斬新でした。もし身近な人に勧めるのであればぜひあえて何も言わず「とりあえず読め」と1巻を手渡してください…っ
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