自分を変える勇気をくれる漫画【夜の名前を呼んで/三星たま】見どころ&試し読み
あなたはどんな時に「不安」を感じますか?
将来満足に生活できるくらいの貯えはあるのか、病気にかかってしまわないか、事故に遭わないか、練習の成果を存分に発揮できるだろうか、など。原因は一概には言えませんよね。
しかし、どんな不安でも払拭するのに大切なのは「自分に自信を持つこと」。
今回ご紹介する漫画は、そんな不安で押しつぶされそうになりながらも自分を変えようと努力する少女のお話。彼女を支える師匠の言葉は、主人公だけでなく読者自身にも自信を持つきっかけを与えてくれるはずです。
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あらすじ
不安が募ると辺りを暗闇に染めてしまう病気を持つ少女・ミラは、その病を治すため心優しき医者・レイとともに森の奥で暮らしている。
空から降ってくる星をジャムにしたり、自信をつけるために早起きを頑張ったり、小さな日常をひとつずつ大切にすることで、ミラはかつての自分を徐々に取り戻していく。
しかしある日、夜の病気に興味を持ったレイの友人が現れ、故意にミラを不安にさせたことで力が暴走してしまい……⁉
すぐには治らない病、その壁に立ち向かっていく患者と医者のヒーリング・ストーリー。
作品の見どころ
ふたつの視点で楽しめるストーリー
このお話にはふたりの主要キャラが存在します。ひとりは夜を呼んでしまう少女・ミラ。そして、もうひとりはミラの担当医・レイ。
どちらの視点でストーリーを見るかで出来事に対する感じ方も変化します。なので読み終えたあと、ついもう一度読み返したくなること間違いなし!
難病と向き合い克服していくミラ、親のように温かくミラを見守るレイ。当事者だからこそ共感できること、すぐに治してあげることができないもどかしさ。両極端の葛藤がこの一本の漫画に詰まっていて、読者の心境に沿った物語を楽しませてくれます。
感情が伝わってくるこだわりの効果表現
この作品の要となる「不安が夜を呼ぶ」設定が、とりわけ説明がなくとも視覚的に伝わるような表現がなされています。
嬉しかったり温かい気持ちの時は画面が明るく、焦りや悲しみなどのマイナスの感情を抱く時は暗い。特にミラは花や星がパァッと飛ぶなど、効果的表現もあり感情が伝わりやすいような工夫がされています。
感情のひとつ、「不安」がキーワードなだけあって作者のこだわりを感じます。
作り込まれた独特なファンタジー世界
「夜を呼ぶ」というミラの力からもわかる通り、この世界には魔法や影から生まれた種族などファンタジー要素が詰まっています。
「降ってきた星を集めて星ジャムを作る」という星国ならではのエピソードも。鍋に溶かし混ぜた星は、まるで流れ星のような美しさです。
中でも特に印象的だったのが、「花の記憶から作り出したテラリウム」でした。ミラの故郷の懐かしい情景を花の記憶が運んできてくれるって素敵ですよね。
ミラを安心させてくれるレイの存在
そして、この作品の最大の見どころは「ミラとレイの関係」です。
不安になると夜を呼んでしまうミラ。ミラはそんな自分が大嫌いで、その気持ちがさらに不安を募らせてしまいます。 そんな彼女を責めたり放置するでもなく、そばで優しく助言してくれるレイの存在はきっとミラにとって大きな心の支えと言えるでしょう。
レイはミラに「自信は不安に効く薬になる」という言葉を授けます。その言葉を信じて自分を変えようと努力するミラの姿は、応援したくなるものです。
そんなふたりの関係を眺めることで、読んでいる側も温かい気持ちになり癒やされます。
作品情報
本作「夜の名前を呼んで」は著者・三星たまさん初の単行本。
連載作品なので今後の展開が楽しみです。
合わせて読みたいマンガ
『星の子どもたち 三星たま短編集』―三星たま
「夜の名前を呼んで」と同時発売された同じ作家さんの短編集です。ハルタコミックグランプリ受賞作「星の影」を含む8本の物語が収録されています。
三星たまさんが描く表情は、ひとめ見るだけで感情がブワッと伝わるところがとても魅力的です。作風が気に入った方にはぜひオススメしたい1冊です。
『甘々と稲妻』―雨隠ギド
感情表現豊かな表情と心に響くあたたかいストーリーという共通点からオススメしたい1冊です。作者がBL作家でもあり、雰囲気作りが秀逸で読んでいると感情を動かされるところが魅力的です。
2016年にアニメ化もされました。(リンク:Amazon prime video)
『とんがり帽子のアトリエ』―白浜鴎
白と黒の濃淡と描き込みが美しくイラスト的な表現が共通しているのでオススメしたい1冊です。
魔法が存在するファンタジーで作り込まれた世界観もとても魅力で読んでいてわくわくさせられます。
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まとめ
今回ご紹介したのは三星たまさんの漫画「夜の名前を呼んで」でした。
人は誰しも不安を抱くもの。そして、それを払拭するには自分に自信をつけることが大切なのだとこの漫画から学びました。
しかし、「自信を持ちたい」と願って持った自信は脆く、ちょっとしたきっかけで崩れ去ってしまい、自分はやっぱり変われないんだとより一層大きな不安にもなりえます。
だけど、本当になにひとつ変われなかったのでしょうか。
自分を変えようとしたことは、みずからスタートラインに立ち走ることを選んだ証です。逃げずにそこに来たことに大きな意味があります。
いきなり何もかもうまくいく人は、他人よりちょっと運が良かっただけかもしれません。ミラがレイの早起きをマネしたように、最初は見様見真似から始めてみましょう!
もしうまくいかなかったとしても、そこから自分に合ったやり方にチェンジしていけば大丈夫。あなた自身が思っているよりも、きっと前へ進めています。きっとこれからも!
そう教えてくれる素敵な1冊でした。
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