人類を守るため戦う子どもたち「夜光雲のサリッサ」あらすじと感想(ネタバレ)
人類を脅かす脅威の巨大生命体・天翔体。人知を超えたその怪物に唯一対抗できるのは、特異な力を持った子どもたちだった―。
重厚感のあるメカ描写が印象的な※Komeさんの漫画、「夜光雲のサリッサ」をご紹介します。あらすじや感想を書くなかで、1巻のネタバレを含むことをご容赦ください。
「夜光雲のサリッサ」あらすじ
人類に仇をなす超巨大生物に、特殊能力を持った子どもとパイロットのバディが挑み戦うSFバトルアクション漫画。
成層圏上層より飛来する謎の巨大飛行生命体・天翔体。
人類はその圧倒的な力に抗う事ができずにいたが、”火球の子”と呼ばれる特殊能力を持った子供たちの登場で未来は彼らの手に委ねられることとなる。
主人公・隠忍(なばり しのぶ)もその一人だった。極端に「存在感のない」彼女は、その存在を他者から認識できなくなる能力を有していた。彼女さえいればミサイルの発射圏内に近づき、天翔体に対抗できる。
そして忍は、そんな彼女を唯一認識できる異形の男性・ダンクとともに、幾度もの危機を乗り越え二人の間には確かな絆が芽生えていく―。
写実的に描かれるメカがダイナミックに戦う迫力のある描写と、特殊能力を持つ子ども同士が惹かれ合い生まれる人間ドラマがアツい作品となっています。
「夜光雲のサリッサ」感想
圧倒的な画力で描かれる巨大生命体と戦闘機の戦闘シーン
まず巻頭のカラーページで魅了されること間違いなし。2ページにわたり大きく描かれた謎の巨大飛行生命体・天翔体がとても立体的で何度読み返しても恐怖を感じるほど。
戦闘機や背景もかなり写実的でリアルな世界観を舞台に繰り広げられるバトルシーンは圧巻。特に大気圏付近での戦闘が美しくも緊迫感があり手汗握る展開だ。
戦闘機へのこだわりは公式サイトの設定資料からもうかがえる。
ちなみに主人公たちが乗る戦闘機は、日本の航空自衛隊のF-2をベースに、F-16XLのデータを流用して改造された機体となっている。
先が気になるストーリー展開
戦闘機に比べて人間キャラクターはかなりゆるい絵柄で、正直言うと最初は「ん?」と引っ掛かりました。せっかくの感動シーンも絵柄ゆえ軽く感じてしまうことも。
しかし、見せ場を盛り上げるようなコマの運びや惹きつけられる物語性に、気づけばどんどんページをめくっていて1話目でかなり慣れ、1巻を読に終わる頃にはまったく気にならなくなっていた。
なんなら2巻を読んでいる最中、これだけ固く冷たい金属をリアルに描いた世界でキャラクターまで写実的だと、もっと冷たい内容になっていたのかもしれないなと思うほど、キャラクターの独特で味のあるタッチに温かさを感じる。
巻数を重ねるごとにキャラの絵もどんどん整ってくるので、物語や世界観が気に入った方であれば特に問題なく楽しめるだろう。
コンプレックスが誰かを守る武器になる
周囲から見えなくなるという主人公のステルス能力。その能力が原因でコンプレックスだったのに、組織にとってはかなりの有効打で多くの命を助けられるくらい活躍できるという対極の価値観が面白い。
もし自分が抱えるコンプレックスが他人を救える力になると言われたとしても、悩みを肯定することに抵抗や怖さがあり簡単なことではない。ましてや主人公の場合、自分の存在を否定することになるわけで。
それでも彼女がその力をふるえるのは、バディとなるダンクの存在が大きい。どれだけ自分で自分を否定しても、彼だけが自分を認識し存在を肯定してくれることで、きっと彼女も誰かのために戦えるのだろう。
「夜光雲のサリッサ」詳細
- 作品名:夜光雲のサリッサ
- 作者名:原作/松田未来、作画/※Kome
- 出版社 :RYU COMICS(徳間書店)
- 掲載誌:COMICリュウ
- 発売日:2020年12月9日
- 既刊数:7巻(2021年10月6日現在)
原作は「SWIFT!」「フォーチュン+ブリゲイド」など、数多くの戦闘機やロボットが登場し活躍する作品を手掛けてきた漫画家・松田未来さん。
青く輝く海原越えて #メカ #ミリタリー #戦闘機 #軍事 #飛行機 #航空機 #兵器 #宇宙空母ブルーノア https://t.co/Fjz4OiJRjy pic.twitter.com/BR5jIEkzWS
— 松田未来 9/13「夜光雲のサリッサ」第7巻発売です! (@macchiMC72) 2021年4月12日
作画は少女と兵器の臨場感あふれるイラストが魅力のイラストレーター・※Komeさんが担当しています。
【4/4】彼女は帝国空軍の航空銃翼兵として夜間爆撃機の護衛任務に就き、王立軍の翼人兵士を相手に戦っています。 pic.twitter.com/CjXxJLIBzZ
— ※Kome@夜光雲のサリッサ 単行本第7巻 9月13日発売です (@asterisk_kome) 2021年9月17日
さいごに
※Komeさんの「夜光雲のサリッサ」をご紹介しました。
大人と子どもがバディになって戦うところが良いですね。火球の子たちも特殊能力があるといえども自分だけでは戦えず、パートナーの力が必須で。二人三脚な関係性に魅力を感じました。
とくに主人公とバディになるダンクが、紳士的かつ世話焼きなところに惚れました。一番の推しキャラです。
2人目の火球の子として登場するゲイブが、容姿の異なるダンクを人外だと嫌がるシーンがあります。しかし、そんな彼も人の身でありながら能力者ゆえ人間扱いされない悲しい存在として描かれていて皮肉っぽくもあるけど切ない気持ちになりました。
あと、作中に鹿児島の天文館へ買い物に行く場面があり、見たことのある場所や島津家の話が出てきます。旅行で行ったことがあったので思わずクスッとなりました。
天翔体と似た特殊能力を持つ子どもたちは13人いて、2巻では未来予知の力を持つ女の子が登場します。この先、どんな能力の子が出てきてどんな戦いをくりひろげるのかが楽しみです。