少女とドラゴンの心温まる家族愛「骨ドラゴンのマナ娘」あらすじと感想【ネタバレあり】
異世界渡世は、コネ・カネ・ホネ!老ドラゴンに育てられた少女は魔女となり、生きていくために人脈とお金を手に入れる旅にでるが―⁉ 雪白いちさんの漫画「骨ドラゴンのマナ娘」のあらすじと感想をご紹介します。
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あらすじ
不要とされるものが行き着く場所、屑篭の森へ棄てられた幼き少女・イブは死期を間近に控えた老ドラゴンに拾われる。ネムと名付けられた老ドラゴンの庇護の元、イブは健やかに成長するが、平穏な日々は束の間、悲しき別れの時がやってくる。しかし、イブは驚きの行動に出て―⁉ 老ドラゴンと少女、種を超えた親子の成り上がり育成ファンタジー!
感想
イブは5歳で棄てられてしまい、それ以降は老ドラゴン・ネムによって育てられました。もちろん人間の子育てなんてしたことのないネムは、森に破棄されていた育児本を熟読して挨拶などの礼儀作法を教え込むという親っぷり。最初こそ哀れみと気まぐれで接していたネムでしたが、イブを中心に次第に自分のまわりが明るくなっていくことを実感します。
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— 雪白いち (@1yukishiro) 2021年4月15日
しかし5年後、ネムは寿命で終わりを迎えることに。永遠の別れとなるはずのふたりでしたが、イブは並外れた魔力と分け与えられたドラゴンの血の力で、ネムの魂を現世に召喚することに成功。これもイブとネム、お互いへの未練が大きく作用した結果だと言えるでしょう。
(2/9) pic.twitter.com/kqsZqjfU6f
— 雪白いち (@1yukishiro) 2021年4月15日
この作品を読んでいると、血の繋がりだけが親子ではないと考えさせられます。現代社会においても家族の形は多種多様です。訳合って生みの両親と暮らせない子どももたくさんいるでしょう。でも、本当に実親と一緒にいることだけが幸せなのでしょうか。自分を本当に大切にしてくれる人であれば、血の繋がりがなくても家族になれると私は思っています。
また、素直で世間知らずなイブは騙されやすく読んでいるとヒヤヒヤするシーンも多々あります。しかし、そんなイブをそばで守るネムの存在にほっこり。イブもその安心感からぽーっと気を抜いていられるのかもしれません。何気ない会話からふたりの信頼関係が伝わり、物語の軸である互いへの愛情がうかがえます。
合わせて読みたいマンガ
『ソマリと森の神様』―暮石ヤコ
寿命の短いゴーレムが森で出会った絶滅危惧種の人間の子どもを同族の元へ連れて行く旅物語。残りの寿命をこの子のためにと願う親心と裏腹に、ずっとそばにいたいと願う子どもの相反する気持ちを抱いたままともに旅を続ける複雑さがイブとネムに共通します。
『ヘテロゲニア リンギスティコ ~異種族言語学入門~』―瀬野反人
研究員が魔界を調査し言語とコミュニケーションを学ぶお話。ワーウルフの子どもがガイド役として旅に同行するのですが、通訳できるので頼もしいけど子どものように好奇心旺盛な面もありまるで兄弟のような存在で、読んでいてとても微笑ましくなります。
『とつくにの少女』―ながべ
呪われたものたちが住む国に捨てらた事実を知らず、いつかおばさんが迎えに来てくれると信じて待つ少女と異形のお話。ダークだけど優しさを感じられるところが、死者を蘇らせてでもそばにいたいイブの思いと通じるところがあります。
まとめ
今回ご紹介したのは雪白いちさんの漫画「骨ドラゴンのマナ娘」でした。「MAGCOMI」で2020年9月から連載がスタートし、現在既刊1巻発売中。「次にくるマンガ大賞 2021」Webマンガ部門ノミネート作品。2021年8月現在、すでに第三刷まで再重版されている注目作です。
死しても残されたイブを思うネム、ネムと一緒にいたくて魂を召喚するために半年間ひとりで必死に頑張ったイブ。いつかまた別れがくることはわかっていながらも、今は一緒に生きていこうとするふたりの姿が切なくも微笑ましいところが魅力です。イブが棄てられる所以でもあるチート級の魔力を駆使して難題を解決していくスカッと感もこの作品の見どころです。
年の差異種族ものが好きな人にぜひ読んでいただきたい作品です。
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